俺と追跡
たけしがジーパンを盗まれたと言っていた。 高校の時同じクラスだった奴で、体格は良いが頭はそんなに良くない。 「誰がジーパンなんて盗むんだよ。」 「お前、履いている状態で盗まれたの?」 なんて軽口を叩きながら歩いていると、前方に黒人(か東南アジアかイスラム?)が ガムをくちゃくちゃさせながら佇んでいるのが見えた。 「あっ、俺のジーパン!」 たけしは怒鳴りながら男に詰め寄って行った。 たけし「それ俺のなんだけど?」 男  「知らないね。」 男は面倒臭そうに言い放った。 たけし「証拠がある。」 たけしはジーパンの腰の部分をむんずと掴むと、ぺろんとめくった。 なんと、TAKESHIと書いてあるではないか。 しかも筆記体で! 男  「わかったわかった、ここじゃ脱げないから、店へきてヨ。」 男は近くで服屋をやっているらしい。俺たちは男に付いていくことにした。 あぁ、きっとあれだな。 最近出来たその建物はT字路の突き当たりにあり、1階建てで全体が深緑。 入口は見当たらないが、覗き穴から奥を見ると何語かわからない赤い文字が見える。 ちょっと不気味だ。 男は建物の端の部分に行くと、手をかけて引っ張った。 隠しドアみたいになっていたのか。 中に入ると、殺風景なガレージって感じ。 男  「ここで待ってろ。」 男は奥へ行った。 俺  「なんかこの建物、変だよね? あの扉の奥、何があるんだろう。」 俺とたけしは勝手に扉を開けた。 なんと、奥には女子供がたくさん捕らえられているではないか。 奴は悪人だったのだ。 俺たちは女子供を逃がすことにした。 40人ぐらいはいるだろうか。 「さ、早く逃げて。」 次から次へと囚われの人々を解放する。 あ、男が怒鳴りながら出てきた。 喚いているけど日本語じゃないので何を言っているのかわからない。 無線を取り出して何か喋ったかと思うと、入口から大勢の銃を持った屈強な男達が なだれ込んできた。 逃げ惑う女子供、押し寄せる男達。 まだ銃は撃ってこないので地獄絵図とまでは行かないが、ガレージ内は蜘蛛の子を 散らしたような状態だ。 入口左側に大きな扉があるので、そこを開けて逃げることにした。 ギギギギ・・・ 軋むような音を立てて開く扉。 目の前は川が流れていた。 後ろには銃を持った男達が迫る。飛び込むしかない。 俺とたけしは川に飛び込んだし、女子供も次々と飛び込んで流されていく。 100m程流されながら歩くと、中州に木の板でできた道に辿り着いた。 川にこんな道があったなんて知らなかった。 俺とゆきえは自転車に乗り、その道を走った。 追われる身じゃなければゆきえとのサイクリングを楽しめたのにな。 今はとにかく逃げなくては。 3分ほど走ると、前方に深緑色の建物が見えてきた。 あのガレージと同じ素材の建物だ。 嫌な予感がする。建物の前に奴らの仲間と思われる人間がたむろしているし。 後ろを振り返ると銃を持った男達が50mぐらいの所に迫っている。 もう逃げ道は無い。 ここで目が覚めた。 そう、これは昨日見た夢なんだ。 インパクトがあったので起きてすぐに書き止めた。 夢の中ではリアルで恐かったんだけど、現実の世界に戻ってからしばらく経つと 恐さも薄れていったし、別に面白くないなと。 そして文字に起こしてみると物足りない。 夢は夢の中だから輝くんだ。 戻る