俺と焼却炉
中学の掃除の時間、俺は焼却炉担当だった。 机運ぶのは重いからイヤ。 雑巾がけは格好悪いからイヤ。 手濡れるのイヤ。 楽で面白くないとイヤ。 こんなどうしようもない考えを持っていたので、焼却炉はうってつけだった。 全校生徒の中から3人しかこれを選択することはできないのだが、「ゴミ」のイメージ があるせいか立候補者は少なく、俺と、同じクラスの仲間2人の計3人で2年間ずっと担当していた。 仕事ははっきり言って楽ちん。 運ばれてくるゴミを焼却炉に入れて燃すだけ。 いつも暇なので、毛虫を捕まえて大きなビンに集めたり、マムシを捕まえたりと、田舎ならではの 遊びで時間を過ごすことが多かった。 そんなに田舎田舎って言うほど田舎でもないが、横の川にはバラタナゴもいたなぁ。 焼却炉には色々な物が運ばれてくる。 一般クラスのゴミは全く面白くないのだが、職員室からやってくるゴミはお宝発掘のチャンスだ。 「中は見ないでね」とか言われると見たくなるに決まってるじゃん。 ・漫画  たぶん生徒から没収した物だと思う。ジャンプが多かったかな。 ・テスト  中間テストや期末テストの問題。βバージョンがゴミに出されるようだ。お宝!   ・教師の個人資料(給与関係のとか)  うわぁ、こんな物が! ・成績表関係の書類  自分のクラスのを発見したことがある。  クラス全員の成績が俺の頭の中に! ・現金  なぜかわからないが硬貨はよく入ってた。 他には美術室のゴミから発掘される文房具などもお宝だった。 未使用の筆記具や画材を何で捨てるんだろう。 焼却炉には担当の教師も一人ついていた。 若い(20代の女)社会科の教師で、世代の差は感じなかった。 漫画の話をしたのを覚えている。デビルマンとか。 彼女は何をやっても怒らなかったので、掃除の時間はいつも楽しかったなぁ。 今はダイオキシン問題がどうのこうのとかで、全国の中学校の焼却炉は全て封印、 もしくは撤去されていると聞いた。 焼却炉作業に携われて良かったと思う。 戻る