俺とスーパーの袋
巨峰が食べたくなったので八百屋へ行った。 売り切れ。 じゃぁスーパーで買うか。 未だにスーパーでの買い物に慣れない。 良い歳をした男がまだ明るい内からスーパーで買い物。 なぜか罪悪感を感じる。何も悪く無いのに。本当に嫌だ。 駄菓子やデザートなども買って、さて袋に詰めようとしたのだが・・・ 袋が空かない。くそっくそっ。 指を湿らせればすぐに開くのはわかっているのだが、先程から感じている 罪悪感のせいか、どうしても技を使わずに開けなければならないような強迫 観念に駆られ、しばらく格闘していた。 そうしたら。 おばちゃんが話し掛けてきた。見た所50歳ちょい手前ぐらいかね。 「そこの布巾で指を湿らすと簡単に開くわよ。」 こんな物騒な世の中なのに、わざわざ他人に教えてあげるなんて・・・ 俺はお礼を言ってその技を使って袋を開けた。 布巾の存在を知らなかったように演技をしたのは当然である。 なんだか久々に人に優しくされたような気がして、泣きたくなってきた。 戻る