俺と離岸流
海の近くに住んでいた人、海と密着した生活を送っていた人、 サーフィンをやっていた人は離岸流を知っていると思う。 これは地方によって呼び名が異なり、うちの方では水脈(みお)と 呼んでいた。 離岸流とは、沖から岸に運ばれてきた水が、再び沖に戻るときの道である。 その時の流れの速さは秒速数mにも及び、一瞬にして沖まで流されることもある。 離岸流は沖ではなく、浜から近い場所で発生するから、知識を持たない一般遊泳客が被害に 遭う事が多かったりする。 ◆離岸流の見分け方 少し離れた所から見れば、水面の色でわかる場合がある。 離岸流の発生するポイントは深くなっていることが多く、流れの向きも周辺と違うので、その部分の 色が少し濃くなっていることが多い。 浜辺の土を含んで沖に流れる場合も色が周辺と異なる。 浜の地形を見て少し考えると、離岸流がどこに発生するか予測することもできる。 これはそんなに難しくない。簡単な物理の問題だろうか。 ◆離岸流にブチ当たったら 離岸流に真っ向から立ち向かってはいけない。体力を消耗するだけでムダだ。 もし離岸流にハマったらどうしたら良いか。 岸と平行(離岸流に対して垂直、横)に泳げば良い。ちょっと泳ぐだけですぐに開放される。 もしくはそのまま流れに身を任せるのもアリだ。沖に早く出たい場合は便利。 初めてまともに当たったのは中学の時だった。 いつものように友人と2人で近くの海水浴場へ行った。 水脈が恐いってのは重々聞かされていたが、この頃はあんまり気にしていなかったように思う。 一般の海水浴場は、離岸流の発生ポイント付近に遊泳禁止の旗が立っているので、それに ぶち当たる可能性は低い。 が、稀にそのポイントがズレたりするとぶち当たる。 俺たちは浜辺からほんの数mの所を泳いでいた。 突然だった。 もの凄い勢いの流れが体を襲った。 一瞬にして浜辺から離されていく。 全力で泳いでいるのに、浜辺への距離は縮まるばかりか、どんどん開いていく。 「これが水脈ってやつか。」 周りよりも水温が低くて、それがより一層恐怖感を募らせる。 真っ向から立ち向かった。 しかしいくら泳いでも全然岸に近づかない。うわー! ひー! ・・・ 数十m流された所で流れは止まった。 あー、びっくりしたなぁ、って言いながら泳いで帰った。 泳げる人なら問題無いが、泳げない人が沖まで流されると難事なので、離岸流にはくれぐれも 気をつけよう。 戻る