俺とヒッチハイク
ヒッチハイクを試みたことが何度かある。 それはいずれも小学生の時で、どこかに行きたいって訳でもなく、 ただ単に車が止まるかどうかを、面白半分で試すのが目的だった。 映画のワンシーンでよくあるアレ。 颯爽と手を挙げる、もしくはスカートをちらっとめくって車を止める金髪の女。 カッコいいじゃん。 俺達もやったさ。 颯爽と・・・ 小学生がやると颯爽じゃなくて滑稽になってしまう。 止まってくれる車はほとんどなかった。 たまに止まる車があったとしても、俺達は「ぴゅーっ」って脱兎のごとく逃げてしまうのだがな。 だって、止めた後どうしていいかわからないし。 ある日。 俺と友人は、家から徒歩30分ぐらいの山で遊んでいた。 ところが、帰ろうとしたら雨が降ってきたではないか。 しかし強い雨じゃないから、俺達にとっちゃ屁も同然。 濡れて帰るまでだ。 ん、 高級っぽい車が俺達の横に静かに止まったぞ。 そして初老の紳士風の男が降りてきた。 「君達を家まで送り届けてあげよう。」 と、紳士語で言ってきたので少し驚いた。 日頃から、「知らない人についてっちゃ駄目よ!」と、耳がタコやイカになるぐらい言われているので、 真っ先に「誘拐」の2文字が頭に浮かんだ。 2回までは断ったんだけどね、 3回も強く言われたら「ハイ」って言うでしょう。子供だから。 言われるままに乗せられ、車は静かに滑り出した。 着いた所は人気の無い埠頭の倉庫。 なんてことはなく、ちゃんと家まで送ってくれた。 まぁ、一応親にそのことを報告したわけだが、親が出てきて礼を言おうとした頃には もう車は跡も形も無かった。 今は物騒な世の中だから、小学生でも知らない車に乗ることはないだろうし、乗せようとするおじさんも いないだろう。犯罪目的以外では。 タイトルと内容がズレてしまった。 ヒッチハイクを試みることはもうないだろうな。 俺は他人に頼ったり借りを作ったりするのが嫌いだからね。 戻る